散らかった部屋の中で、ガッデスはようやく目当ての物―拳銃を見つけた。最後に使ったのはハリーがまだ生きていた時だから、随分前になる。状態はそう悪
くなかった。護身用に持つには丁度いい。
元々射撃の腕は立つ方だった。彼女がまだ警官だった頃は、署の中で一番の凄腕だと言われ続けてきた。人質や民間人を誤射したことは一度もない。二人の都
合がいいときは、ハリーと連れ立って近くの射撃場に足を運んだものだった。
ガッデスは机の上のブランデーの壜を取ると一口飲んだ。皮肉なことだが、パコのバー『ラ・エスペランサ』に足を運ぶようになってから、少しづつではある
が酒の量は減っている。夫を失い、仕事を辞め、酒に溺れていた彼女が立ち直る兆しを見せ始めたのは、親身になって話を聞いてくれたこのマスターによる所が
大きい。
何年振りかの手入れを終えた拳銃をガッデスはハンドバッグに入れた。ぼんやりとした頭が冴え渡ってきた。